オーロラは世界で最もユニークな自然界の奇観の一つとして知られています。多彩で鮮やかな色の光で染まる夜空を目にする機会を求めて、毎年、観光客が北極圏に集います。人間はオーロラを何千年にもわたって観察してきました。その結果、多くの神話や伝説が生まれましたが、それらの憶測ではめったに答えられることのない質問が一つあります。つまり、オーロラは音を出すのでしょうか?
答えは「出します」です。過去の観測者には、オーロラから奇妙な音が出ていたと報告した人がいますが、その背後にあるメカニズムが科学者によって究明されたのは最近のことでした。続きを読んで、オーロラがなぜ音を出すのか、どのように聞こえるのかについて学んでみましょう。
オーロラはどのような音を出すのか

オーロラの視覚的な美しさは何世代もの観測者によって認められてきましたが、オーロラとともに独特な騒音が聞こえることが報告されるようになったのは比較的最近のことでした。オーロラの音は、ラジオやテレビのホワイトノイズに似た「不気味」な音と表現されましたが、気象現象かその他のオーロラには無関係な事象によって引き起こされたものとして長年にわたり否定されてきました。しかし、最近の科学研究では、オーロラが実際に音を発することが確認されています。とはいえ、多くの場合、音は人間に聞こえません。
オーロラがなぜ音を発するのかを理解するには、まずオーロラの仕組みを理解することが重要です。オーロラは、太陽が定期的に発する荷電粒子のことを指す太陽風によって発生します。太陽風は、地球の磁場によって形成された保護バリアである地球の磁気圏と衝突します。磁気圏は有害な太陽からの放射線を偏向させる役割を果たし、地球が生命を支えることができる理由の一つです。
磁気圏が大気と交差する点 (北極と南極のこと) で太陽風が地球に衝突すると、太陽風内の荷電粒子が大気中の原子を励起します。原子は、正電荷を帯びている陽子、電荷を帯びていない中性子、そして、負の電荷を帯びている電子という3種類の粒子で構成されています。陽子と中性子は、原子の中心部である核の中にあり、電子は、月が地球を周回したり地球が太陽を周回するのと同じように核を周回します。
原子が励起されると、電子は既存の軌道から、核からより離れた高エネルギーの軌道に移動します。これらの電子が元の軌道に戻ると、光の粒子である光子を発します。無数の原子が励起されると大量の光が発生し、オーロラができます。この効果は、電気を使ってネオンガスの原子を励起させ、発光させるネオンサインに似ています。
元々科学者たちは、オーロラは音を出すことができないと考えていました。ある有力な説では、オーロラを見ている最中に人々が耳にした音は、木々から発生したものだと示唆しました。オーロラの発生中、周囲の大気には通常以上に高レベルの電気を帯びることがあるため、地上の物体と周囲の空気の電荷に差異が発生します。
金属製のドアノブに触れると、その手に静電気が放電されるのと同じように、松ぼっくりや木の葉などの先のとがった物体も放電する可能性があります。そのため、オーロラにより木の葉や松ぼっくりから大量の電気が空中に放電され、鑑賞者がときどき耳にするパチパチ音が発生すると考えられていました。
しかし、2012年にフィンランドの科学研究により、オーロラの音は、北極圏のこずえよりもずっと高い地上70メートルの空中から発生することが確認されました。この研究では、オーロラの音は、高度が高くなるのに応じて気温が通常のように下がるのではなく上昇する大気中の部分を指す逆転層によって生じることが究明されました。逆転層は穏やかな晴れの日の後によく発生し、日没後に地表が冷え、暖かい空気が上昇し、穏やかな気象条件のため上空でその暖かい空気がより冷たい空気と混ざりにくい日没後にできます。
この研究によると、逆転層は電気に対し一種の蓋として機能し、下の空気中の負の電荷を、上の空気中にある正の電荷から遮ります。通常はこれによって耳で聞き取れるような何らかの効果が発生することはありませんが、オーロラの発生中は、太陽からの荷電粒子によって逆転層が壊され、正電荷と負電荷が混ざり、静電気が生じるため、オーロラの鑑賞者が時に耳にするパチパチンが発生するのです。
このレポートでは、逆転層は通常、地上70メートルの大気中に形成されると記述されていますが、これはレポートが指摘するとおり、オーロラの音が発生した場所でもあります。これによって、逆転層がオーロラの音の原因であるという主張が確認されました。
概して、非常に特異的な条件が揃わないと逆転層は形成されないため、オーロラの音はなかなか聞くことができません。また、オーロラのサイズや長さが特定のものでないと、音の原因となる逆転層が壊れません。オーロラの音は、太陽風がより頻繁に発生し、その規模も大きい11年周期のピーク時に最もよく発生します。そのため、オーロラを見に出かけても、オーロラの音を耳にすることができる保証はありません。
まとめ

長い間観測者の妄想として否定されてきたにもかかわらず、現代科学によりオーロラの音は実在することが実証されました。オーロラを耳にすることができる可能性は低く、非常に穏やかな天候と特に強力な太陽嵐という条件が両立されていることが条件となります。しかし、オーロラを観賞するために北極圏に行けば、ただオーロラを目にするだけでなくその音を聞ける可能性は十分にあります。オーロラに関心がおありなら、オーロラ観賞旅行を予約してご自分でお試しになってみてはいかがでしょう?